CO2削減
エコスタイルインタビュー
第4回 中村征夫さんのエコスタイル 2003/09/01掲載
中村征夫さん

日本の各地の海に潜り、環境の悪化を実感していらっしゃる中村征夫さん。実際に海の中はどんな状態なのでしょう。
「たとえば沖縄、開発によって珊瑚礁が土砂の下敷きになっている。外からは見えないけれど、山の中に一歩入ってみると、乱暴な状態で土地を掘り起こしていたりします。そこに雨が降ると、その土砂がみんな海に流れ込むわけです。言ってみれば海は自然の流れの最終地点ですからね。珊瑚は沿岸に生息していますから、流れ込んだ土砂をかぶって窒息死してしまうのです。
そしてオニヒトデの大量発生。オニヒトデは珊瑚を食べますが、珊瑚が健康な状態であれば、オニヒトデの卵の大部分を食べてしまうのでバランスが取れていたのです。ところが珊瑚が死ぬとオニヒトデの卵がほとんど孵ってしまう。もう、足の踏み場もないほど増えてしまうんです。しかも、オニヒトデの卵は黒潮に乗って、九州、四国、和歌山、三宅島まで、あっと言う間に北上してしまった。」
珊瑚礁が死んで行く。そんな悲しい事態は南の島だけではないようです。
「北海道や東北地方の海中の砂漠化現象も広がりつつあります。先日、秋田の男鹿半島の海に潜ったのですが、岩に海藻が付いていない。海の中は非常に明るいのだけれど、ウニが点々と転がっているだけという非常に寂しい状態になってしまっている。これは岩に珊瑚藻という藻類がはびこってしまったためなんです。もともとはミネラルや鉄分などを含んだ地下水が海底からじわじわと湧き出ていた。川からも動物性、植物性のプランクトンが流れ込んでいた。それが山の開発で土砂しか海に流れ込まなくなったため、沿岸海域の生命力が弱ってきた。その結果、珊瑚藻が岩にびっしりと付いてしまって昆布も海藻も育たない海になってしまったんです。」

「開発がすべていけないとは思っていません。しかし、人間は今日よりも明日はもっと豊かになりたいと思う生き物のようで、ムダなものをどんどん作り、消費している。たとえばオイルショックの時、街のネオンも消えたし、テレビも夜12時ごろには終了していた。それが、いつの間にかテレビは明け方まで放映しているし、観光スポットではライトアップ。喉元過ぎればというか、人間て愚かだなぁと感じます。海の生き物たちは、今日より明日とはまったく考えていない。その日暮らしですが、そういう暮らし方を見ていると、学ぶ部分は多々あるなと思います。」
ブレーキのない人間の欲求と環境の悪化は密接なつながりがあるとおっしゃる中村征夫さんは、海流の壮大な流れと環境汚染について、 「少なくとも個人としては、環境を汚してしまったら、必ず自分に返ってくることに気がつかなければならない。つい最近マーシャル諸島から戻ったのですが、そこには北赤道海流というのが流れていて、それが北上して日本列島の南端にたどり着く。そして黒潮と名を変えて日本の東海岸を上昇。銚子沖で二手に別れ、一方はさらに黒潮として北上し、もう一方は小笠原海流となってマリアナ海溝まで行くんですよ。そのように海流は世界をめぐっている。つまり、自分が汚したものが、他の汚染とともに拡大され、自分のところに、あるいは子供や孫のところに戻ってくる。それをきちんとイメージして欲しいですね。」

自然は脆い反面、とても強くて人間はとても太刀打ちできないと感じていらっしゃる中村征夫さん。
「人間がいくら頑張ってもできないことを、海のバクテリアなどがらくらくとやってのける。三国町で座礁したナホトカ号。そこから流れ出た油を、海のバクテリアは2年くらいできれいにしてくれる。人間も石についた油などを布で拭き取ったりしましたけれど、それではきりがない。海の自浄作用はすごいものです。しかし、海の環境が悪化すれば、その自浄作用がなくなり、永久に汚れた海が残ってしまうことにもなりかねないのです。」
地球環境をなんとかしたいと私たちも思っているのですが。一体どうすればよいのでしょう。
「自分の家のまわり。原っぱでもいいし、川や湖など、どこでもいいけれど、ひとつスポットを選んでしょっちゅう出かけてみる。お弁当を持って遊びにいってもいいし、ゆっくり散歩を楽しんでもいいし。そうして、しょっちゅう出かけていると、いろいろな変化がわかる。汚れてきたとか、キレイになってきたとか。そうすると何故という疑問がわいてくるはずです。人に聞いたり、調べてみると、雨が降ったからなのか、何か開発が始まったのか原因がわかってくる。そうした目配りをしていると環境に敏感になってきます。自分の住んでいる所はキレイであって欲しいし、守りたいという思いがあるでしょうから、困った問題なら地元の新聞とキャンペーンをするとか、仲間と小冊子を作ってみるとか。その時、きちんと写真や映像などを取っておくと、人の心も、行政も動かす説得力が出てくると思いますよ。」
まず、身のまわりの環境を知ること。それならすぐ始められそうですね。近所のお気に入りスポットを探しに、カメラを持参して出かけてみませんか。
中村征夫
写真家 1945年秋田県生まれ。
20歳のときに独学で潜水と水中写真を始め、後に専門誌のカメラマンを経てフリーランスとなる。国内外の海や自然、人々、そして環境を含め精力的に取材。数多くの話題作を発表する。ライフワークの東京湾をはじめ社会性のあるテーマにも果敢に取り組み、水中の報道写真家としても定評がある。またスチールのみならず、劇映画やハイビジョン映像でも、その撮影技術は高く評価されている。海の魅力と環境問題を様々なメディアをとおして、伝え続けている。
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