
2014年04月30日発行 Vol.391 ―江戸の町人たちから学ぶ、心配り―
江戸の町人たちから学ぶ、心配り
今現在も私たちの生活に浸透している歌舞伎や将棋、相撲、落語といった娯楽や、和菓子や和食といった食文化。これらが庶民の間で発展したのは江戸時代のこと。畳や障子が一般的になったのも、この時代だそうです。徳川家康が江戸に幕府を開いた1603年から、徳川慶喜が大政奉還をした1867年までの260年以上もの間、大きな争いごともなく繁栄し続けた江戸の町。そこには、人づきあいを大切にする、町人たちの知恵がありました。
そこで今回のTEPOREトクトクコラムでは、江戸の町人たちから学ぶ、心配りについてお話したいと思います。
人口密度の高い江戸の町で暮らす人たちは、人間関係を円滑にするために、様々な気遣いをして、失礼のない応対を身に着けていたそうです。これらは、今の時代にも応用できるものが数多く存在します。ここでは、古くから伝わる知恵の中から、TEPORE編集部が厳選した現代社会に活かせるものをいくつかご紹介します。
●先入観を持たない
江戸では、初対面の相手に、年齢、地位、職業を聞かないという暗黙のルールがありました。この3つを先入観として持つと、公平な目で人を見ることができなくなるため、あえて聞かずに、自分の直感力だけで判断していたそうです。あるとき、TEPOREスタッフの一人が「偏見や先入観、思い込みは捨てて、子どもの頃のように、出会った人とすぐに打ち解けられたら良いのに…」と 話していたことがありました。大人になると、知らず知らずのうちに色々な情報に左右されてしまいがちです。先入観を持つことなく、一人の人間として接することで、コミュニケーションのしやすい状況が生まれます。人づきあいにおいて、忘れてはならないことですね。
●お互いに謝って、トラブルを未然に防ぐ
トラブルが発生したとき、両者間で「うかつでした」と謝っていた江戸の人たち。誰かの足を踏んでしまったとき、踏んだ側が謝ることはふつうですが当時は踏まれた側も「自分の不注意のために足を踏ませてしまって、すみません」という意味を込めて、「うかつでした」と謝っていたそうです。もちろん、喧嘩に発展させたくないという思いや、踏んでしまった相手を思いやる気持ちもあるのでしょう。ぜひ今日から真似たい、大人な対応ですね。
●「忙しい」を口にしない
江戸の人たちは「忙しい」といわれると、とても怒ったそうです。忙しいという漢字は、りっしんべんに「亡」と書きます。つまり心が亡くなるという状態を示しています。そのため当時の人は、心を亡くした人に、大事なことを任せていられないと思っていたそうです。また「忙しい」と口にするのは、自分のことだけで精いっぱいのため、心配りができない、と自ら認めているようなもので、野暮とされていました。忙しいことはある意味、大変ありがたいことですが、忙しいのは自分だけではないはずです。どんなときでも心を亡くさず、周囲を気遣える人になりたいものです。
●聞き上手
もし、あなたが話をしているときに、相手が腕や足を組んだり、顔を上げずにメモを取り続けていたりしたら、どう感じますか?話す相手と正対して少し身を乗り出し、相手の目を見て相槌を打ちながら、どこかで聞いたことがある話でも最後まで聞く。これが「聞き上手」です。江戸の人たちは、相手が気持ちよく話せるように、聞く方も礼儀をつくしていました。現代でも優秀な新聞記者は、メモを取らずに話を聞き、相手が席を外したときにメモを取るようにしているのだそうです。「あなたの話を興味深く聞いています」という聞き上手な姿勢が、思わぬ“特ダネ”に出あうコツなのかもしれませんね。
このように、江戸の町人たちの対応は、人に対する優しさや思いやりという、日本人が誇る美徳が基盤になっています。これは海外からも高く評価され、大規模な災害などが起きたときの日本人の秩序ある行動は、多くの国で話題になることもしばしば。非常時にもかかわらず、相手を思いやる気持ちや助け合う気持ちを忘れず、冷静さを失わない日本人に、世界の人々から驚きと賞賛の声があがっています。これからも“心の国・日本”といわれるよう、周囲の人への心配りを大切にしていきたいですね。
周囲の環境に影響されやすい子どもに配慮して、住まいを3回移したという故事から生まれた「孟母三遷(もうぼさんせん)」という言葉があります。環境はもちろん大切ですが、子どもは大人の言動を見ながら育つともいわれていますので、私たちも日頃の振る舞いには十分注意したいものです。そんなときこそ江戸に生きた町人たちの心意気がお手本となるのでしょうね。





















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